医療面接で何を聞くか? キーフレーズまとめ!
研修医の成長を4段階で表す「RIMEモデル」なるものがあるそうです。
- Reporter :報告者、カルテのSubjective data(主観的・間接的)とObjective data(客観的・直接的)
- Interpreter :解釈者、カルテのAssessment(評価)
- Maneger :実践者、カルテのPlan(計画)
- Educator :教育者
問題志向型診療記録(POMR、problem oriented medical record、対義語はイベント志向型 event oriented)の記載方法として、SOAPを問う国試問題は頻出です。
そこで今日の一題。
【 110H28 】
【答え】e
平凡な問題です。試験中に見かけるとほっこりします。S「昨夜から下痢」O「腹部に圧痛」A「ウイルス性の急性腸炎」P「整腸薬を処方」「細胞外液の点滴静注」ですね。
さて、今日のテーマは「S」を深める。すなわち医療面接で何を聞くか。
キーフレーズがたくさんあるので、比較検討したいと思います。
「〇〇歴」シリーズ:現病歴→既往歴→家族歴→生活歴
もう少し膨らませて、現病歴の前にID(年齢・性別)を、プレゼンなら既往・ID・主訴をまとめてOS(Opening Statement)を、後にROS(Review of Systems)を入れてもいいかもしれません。
既往歴は、active(治療中)なものとinactive(治療済み)なものに分けられます。activeなもの=治療中ということは、たいてい内服薬があるので、既往歴の後に内服薬を書くと流れが良さそうです。
家族歴は「血のつながった家族」に「大きな疾患」「入院」「似たような病気」がないか聞きますが、うまく聞き出せるかどうか。
生活歴(社会歴)は、喫煙・飲酒・アレルギー・職業など。喫煙は本/日×年=Brinkman indexまたは箱/日×年=Pack yearで聞きますが、過小評価されがち。日本ではふつう1箱20本でしょうか。吸ったことないならnever smoker。飲酒歴は何をどれくらいの量で、どれくらいの頻度で飲むか。機会飲酒ならsocial drinker。アレルギーは薬・食物・花粉と分けて聞くと安心。
主訴を深めるキーフレーズ:OPQRST、OLQIFAT、LQQTSFA、COMPLAINTS、LIQORAAA
皆さん、どれを使っているでしょうか。
一番の有名所はOPQRST。心電図のP波→QRS波→T波と同じ順のアルファベット列。語呂の覚えやすさは素晴らしいですが、なにぶん医療面接で聞く順と異なるのが難点。U(understanding)やV(Value)を加えたり、微妙に単語が違ったり(たとえばSがSeverity)するなど派生版も多数あります。
私の大学で習ったのがOLQIFAT。OLが求愛してファンタスティック。医療面接で聞く順とおおむね一致しており、使いやすい。OL「いつ・どこ」は多くのキーフレーズと同様です。QI「質・量」は他のキーフレーズではQ、QQとまとめているものも。FA「増悪・寛解・随伴因子」は様々な表現がありますが、端的にファクターと覚えるのがベストかと思います。T「経過」は面接で一番重要な要素。時系列に整理することが重要です。
診断学の世界でもっとも注目を浴びているのがLQQTSFA。エルキューキュータスファ。ちょっと覚えにくいけど格好良いですよね。カルテにはぜひこれを書きたい!医療面接で聞く順とおよそ合致しています。特徴はTimingとSettingでしょうか。時間軸とその時々の状況を聞くという、まさに診断学の真骨頂。
私の病院ではCOMPLAINTSを習いました。訴え。語呂は覚えやすいけど、単語は他のキーフレーズとやや異なります。最初と最後のChief complaintsとSimilar episodeが特徴的。
勢いのあるLIQORAAA。AAA級のお酒!お酒好きの方はぜひ使ってみてください。LIQORは他のキーフレーズと同様ですが、ファクターをAAAと言い切っていて気持ち良いですね。
背景を深めるキーフレーズ:AMPLE、MIST、ABCDEFG、PAM HUGS FOSS
ここはAMPLEとMISTを抑えておきたい。
AMPLE
- Allergy アレルギー 薬・食物・花粉と分けて聞きます。
- Medication 内服薬 activeな既往歴と関連させておきます。
- Past history / Pregnacy 既往歴と妊娠(月経) 若い女性と見たら妊娠を疑います。
- Last meal 最後の食事 今日の一題110H28ではここを聞きたい!
- Event 受傷機転 これは次のMISTで聞きましょう。
MIST
- Mechanism 受傷機転
- Injury site 受傷部位
- Sign バイタルサイン
- Treatment 治療内容
ABCDEFG
- Anamne / Allergy 既往歴とアレルギー
- Background 職業や住居
- Cook 食欲、飲酒、喫煙
- Drug 内服薬
- Exposure 曝露歴、ペットや旅行
- Family 家族歴
- Gynecology 婦人科(妊娠、月経)
PAM HUGS FOSS
- Past medical history 既往歴
- Allergy アレルギー
- Medication 内服薬
- Hospitalization 入院歴
- Urinary 泌尿器
- Gastrointestinal 消化器
- Sleep pattern 睡眠
- Family 家族歴
- Obsterics / gynecological 出産歴、月経、
- Smoking / alchohol 喫煙、飲酒
- Sexual habit 性交歴
意外と使える日本語語呂合わせシリーズ:かきかえ、三快一重
かきかえは感情・期待・解釈・影響のこと。
三快一重は快眠・快食・快便・体重減少のこと。
だいぶ長くなってしまいましたが、やはり医療面接は基本。現病歴→既往歴→家族歴→生活歴を核に、LQQTSFAで深めて、AMPLEやMIST、かきかえや三快一重を加えると相当情報が集まりそうです。ではまた〜