サイアザイド系利尿薬と高尿酸血症

晦日!当直です、はい。病院で年越しかぁ。研修医あるあるです。

 

全く更新できておらずすみません。「継続は力なり」・・・ああ。

 

【テーマ】この前同期の研修医と話題にした112A3に、研修医的視点からツッコミを入れていきたいと思います!

 

【112A3】

112A3

112A3 高尿酸血症

【答え】 d

【解説】

a:とりあえず保留。受験時代は利尿薬の中で有害事象に尿酸たまるのあったなぁ、どれだったかな〜と自分の曖昧な不勉強を後悔しました。今日の記事のポイントはここ!研修医になってからこの選択肢が医師の常識であることを知りました。

b:アンモニアを尿酸で排出するか、尿素まで分解できるか、動物によって異なるよね、この疾患は尿酸代謝系の障害だよね、ということで尿酸たまります。

c:腫瘍という大量の細胞が崩壊して、その中から尿酸が出てきます。

d:Fanconi症候群といえば、とにかく尿細管で吸収できないイメージ。尿酸も尿から出ていくはず!低尿酸血症になります。答えはこれだ!

e:腎不全だから、本来排出すべきものがたまるイメージ。尿酸もたまります。

 

【研修医的視点①】糖尿病はDM、高血圧はHT、脂質異常症はDL(高脂血症という一昔前の言い方ならHL)と略するわけですが、高尿酸血症は? 最近カルテを眺めていたらHUAと省略することを知りました。どこかのスマホみたいですね。ポイントは下記2点(笑)

・初見でも意味を類推できるという点では、数ある医学の略語の中では良心的

・MS:僧帽弁狭窄症なのか、多発性硬化症なのか分からないという二重性もなし

 

 【研修医的視点②】利尿薬で目にすることが圧倒的に多いのはラシックス(静注のループ利尿薬)、フロセミド(経口のループ利尿薬)。やはり、学生時代に習ったとおり、利尿薬の中で効果がとても強いからでしょうか。力価は、ラシックス20mg=フロセミド40mgと静注→経口では2倍必要になるようです。

 

サイアザイド系は、トリクロルメチアジドが有名。チアジドってiを「アイ」と発音すれば、サイアザイドになりそうですね。研修医になって、サイアザイド系を飲んでいる患者でフェブリク(尿酸産生阻害薬、フェブキソスタット)を処方されている症例に出会った時、この問題を思い出しました。サイアザイドって尿酸を上げるんだなと実感した瞬間でした。

 

尿酸、痛風についてのポイント

痛風発作が現に起きているときは、NSAIDsでおさえる

・前兆期にはコルヒチン、NSAIDs無効ならステロイド

痛風発作中は尿酸を上下させない

・①尿酸産生阻害薬=アロプリノールフェブキソスタット

・②尿酸排出促進薬=プロベネシド、ブコロームベンズブロマロン

・尿酸結石やシュウ酸Ca結石など尿路結石と関連するかも:その場合投与するのは①であって、②ではない。尿アルカリ化薬も有効。

参考:

minds.jcqhc.or.jp

   高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版の要点 

 

そして、研修医になって循環器内科を回って高尿酸血症が心血管リスクの一つとして数えられるかもしれないということを知りました。

 

カルテ例:あるなしを聴取して、例えば下記のように書くとまとまりますね。

心血管リスク

(+) Age HT DM DL CKD/HD 家族歴 SAS Smoke Stroke HUA

(−) 

 

また今回も雑多な話になってしまいました。サイアザイド系→HUA起こしうる、と。それを見越して尿酸産生阻害薬を投与されている症例を見たことを共有したかったのです。国試は臨床につながっています。

 

さて当直に向かうとしますか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

よいお年を〜!

ここ3年分の1問目を比べる!

本日の企画は「毎年の1問目を比べる!」

112A1

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答え e

試験開始早々、はてなが3つくらい浮かびました笑

高NH3血症って言われてもさ・・・選択肢を眺めてみると、代謝性疾患が並んでいます。NH3の代謝経路といえば、尿素回路(またの名をオルニチン回路)か!

というわけで、OTC欠損症を選ぶわけです。決して論理的思考ではないです。「オルニチン」「欠損」から回路が傷害されてNH3が貯まるのかなという予想にすぎないです。

 

<参考>

▶難病情報センター | 代謝疾患分野 オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(平成22年度)

▶小児慢性特定疾病情報センター|オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症

 

111A1

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答え b

婦人科・乳腺外科からの出題。この分野は覚える疾患が限られているので、学生時代に勉強しやすい範囲でした。ただ、出題頻度は少ないので後回しにしがち笑

両側、疼痛ときたら乳腺症を選ぶことになります。他の選択肢は、ふつう片側だし、疼痛が主訴になるかな〜と疑問符がつきます。

 

110A1

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答え c

DVTかぁ。エコノミークラス症候群のように長期間脚を動かさなかったり(血液うっ滞→長期臥床・肥満)、脱水していたり(血液濃縮→妊娠)、凝固系が亢進していたり(→担癌状態)、血管壁が障害されていたり、すると血栓ができてしまう疾患。Virchow 3徴をもとに原因が分類されます。また入院するとDVTリスクが評価されます。この問題でポイントをあげるとすれば、担癌状態でしょうか。Trousseau症候群(悪性腫瘍による凝固系の亢進)という名前が付いているくらい、有名な病態なんだそうです。

 


 

以上、1問目をざっと見てきました。けっこう特徴的な問題が並んでいるように思います。10年分1問目だけ解く!とかも勉強法としてありかもしれないですね。Medu4で検索すればすぐ見られますし。

 

ADLの簡易評価ツール「DEATH SHAFT」

 今夜の一題。

 【 112F30 】

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 【答え】c

 ADL、より対比を明確にするならBADL(基本的日常生活動作)とIADL(手段的日常生活動作)の問題です。選択肢cが炊飯器などの道具を使うのでIADL、その他の選択肢は道具を使わないのでADL。もちろんADLでも、“モノ”は使いますが、それほど高度な使い方はしません。

 さて、まずは略語をスペルアウト!

 BADL:Basic Activities of Daily Living

  IADL:Instrumental Activities of Daily Living

 道具を使うかどうかという違いがあるわけですが、ADLでも”モノ”は使うので、具体例は意外に覚えにくいです。

 それぞれ評価方法があり、ADLならBarthel Index、IADLならLawton尺度あたりが定番です。▶日本老年医学会のサイトに詳しく紹介されています。実臨床ではリハの方々が評価してくれることが多いです。しかし、研修医も数値こそ付けなくともおおよその状態は捉えておきたい所。そんな時に役立つのが、DEATH SHAFTというキーフレーズです。

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 ADLは高齢者で評価することが多いわけですが、高齢者の包括的な評価には下記があります。余裕のある時にしっかり評価しておきたいものです。

  • CGA 7(高齢者総合機能評価)
  • Mini-Cog(あるいはHDS-R, MMSE)
  • DEATH SHAFT
  • 経済状況、家族状況、集団行動

 

 最後にADL/IADLの国試をもう一問!

 【 110E19 】

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 【答え】d

 服薬管理は重要ですからね。特に高齢者や認知症の方だとポリファーマシーとなっているのをよく見かけます。認知症が進むと、カレンダー管理が導入されたり、訪問看護師による服薬確認が必要になったりします。国試で問われるのも納得です!

 

 

<参考文献>

医学書院/週刊医学界新聞(第3202号 2016年12月05日)

 

 

医療面接で何を聞くか? キーフレーズまとめ!

 研修医の成長を4段階で表す「RIMEモデル」なるものがあるそうです。

  1. Reporter  :報告者、カルテのSubjective data(主観的・間接的)とObjective data(客観的・直接的)
  2. Interpreter :解釈者、カルテのAssessment(評価)
  3. Maneger  :実践者、カルテのPlan(計画)
  4. Educator  :教育者

 問題志向型診療記録(POMR、problem oriented medical record、対義語はイベント志向型 event oriented)の記載方法として、SOAPを問う国試問題は頻出です。

 

 そこで今日の一題。

 【 110H28 】

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 【答え】e

 平凡な問題です。試験中に見かけるとほっこりします。S「昨夜から下痢」O「腹部に圧痛」A「ウイルス性の急性腸炎」P「整腸薬を処方」「細胞外液の点滴静注」ですね。

 さて、今日のテーマは「S」を深める。すなわち医療面接で何を聞くか。

 キーフレーズがたくさんあるので、比較検討したいと思います。

 

 「〇〇歴」シリーズ:現病歴→既往歴→家族歴→生活歴

 もう少し膨らませて、現病歴の前にID(年齢・性別)を、プレゼンなら既往・ID・主訴をまとめてOS(Opening Statement)を、後にROS(Review of Systems)を入れてもいいかもしれません。

 既往歴は、active(治療中)なものとinactive(治療済み)なものに分けられます。activeなもの=治療中ということは、たいてい内服薬があるので、既往歴の後に内服薬を書くと流れが良さそうです。

 家族歴は「血のつながった家族」に「大きな疾患」「入院」「似たような病気」がないか聞きますが、うまく聞き出せるかどうか。

 生活歴(社会歴)は、喫煙・飲酒・アレルギー・職業など。喫煙は本/日×年=Brinkman indexまたは箱/日×年=Pack yearで聞きますが、過小評価されがち。日本ではふつう1箱20本でしょうか。吸ったことないならnever smoker。飲酒歴は何をどれくらいの量で、どれくらいの頻度で飲むか。機会飲酒ならsocial drinker。アレルギーは薬・食物・花粉と分けて聞くと安心。

 

 主訴を深めるキーフレーズ:OPQRST、OLQIFAT、LQQTSFA、COMPLAINTS、LIQORAAA

 皆さん、どれを使っているでしょうか。

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 一番の有名所はOPQRST。心電図のP波→QRS波→T波と同じ順のアルファベット列。語呂の覚えやすさは素晴らしいですが、なにぶん医療面接で聞く順と異なるのが難点。U(understanding)やV(Value)を加えたり、微妙に単語が違ったり(たとえばSがSeverity)するなど派生版も多数あります。

 私の大学で習ったのがOLQIFAT。OLが求愛してファンタスティック。医療面接で聞く順とおおむね一致しており、使いやすい。OL「いつ・どこ」は多くのキーフレーズと同様です。QI「質・量」は他のキーフレーズではQ、QQとまとめているものも。FA「増悪・寛解・随伴因子」は様々な表現がありますが、端的にファクターと覚えるのがベストかと思います。T「経過」は面接で一番重要な要素。時系列に整理することが重要です。

 診断学の世界でもっとも注目を浴びているのがLQQTSFA。エルキューキュータスファ。ちょっと覚えにくいけど格好良いですよね。カルテにはぜひこれを書きたい!医療面接で聞く順とおよそ合致しています。特徴はTimingとSettingでしょうか。時間軸とその時々の状況を聞くという、まさに診断学の真骨頂。

 私の病院ではCOMPLAINTSを習いました。訴え。語呂は覚えやすいけど、単語は他のキーフレーズとやや異なります。最初と最後のChief complaintsとSimilar episodeが特徴的。

 勢いのあるLIQORAAA。AAA級のお酒!お酒好きの方はぜひ使ってみてください。LIQORは他のキーフレーズと同様ですが、ファクターをAAAと言い切っていて気持ち良いですね。

 

 

 背景を深めるキーフレーズ:AMPLE、MIST、ABCDEFG、PAM HUGS FOSS

 ここはAMPLEとMISTを抑えておきたい。

 AMPLE

  • Allergy アレルギー 薬・食物・花粉と分けて聞きます。
  • Medication 内服薬 activeな既往歴と関連させておきます。
  • Past history / Pregnacy 既往歴と妊娠(月経) 若い女性と見たら妊娠を疑います。
  • Last meal 最後の食事 今日の一題110H28ではここを聞きたい!
  • Event 受傷機転 これは次のMISTで聞きましょう。

  

 MIST

  • Mechanism 受傷機転
  • Injury site 受傷部位
  • Sign バイタルサイン
  • Treatment 治療内容

 

 ABCDEFG

  • Anamne / Allergy 既往歴とアレルギー
  • Background 職業や住居 
  • Cook 食欲、飲酒、喫煙
  • Drug 内服薬
  • Exposure 曝露歴、ペットや旅行
  • Family 家族歴
  • Gynecology 婦人科(妊娠、月経)

 

 PAM HUGS FOSS

  • Past medical history 既往歴
  • Allergy アレルギー
  • Medication 内服薬
  • Hospitalization 入院歴
  • Urinary 泌尿器
  • Gastrointestinal 消化器
  • Sleep pattern 睡眠
  • Family 家族歴
  • Obsterics / gynecological 出産歴、月経、
  • Smoking / alchohol 喫煙、飲酒
  • Sexual habit 性交歴

  

 

 意外と使える日本語語呂合わせシリーズ:かきかえ、三快一重

 かきかえ感情・期待・解釈・影響のこと。

 三快一重快眠・快食・快便・体重減少のこと。

 


 

 だいぶ長くなってしまいましたが、やはり医療面接は基本。現病歴→既往歴→家族歴→生活歴を核に、LQQTSFAで深めて、AMPLEMISTかきかえ三快一重を加えると相当情報が集まりそうです。ではまた〜

カリウムの20-40-60-100法則

 研修医になって早4か月。使う知識はけっこう偏っていて、医師国試で勉強した医学の一通りの知識がどんどん失われていくことに危機感を持ち始めています。復習と独学のために、また当ブログを訪問してくださった皆様と医師国試をネタに交流をしたくて、日記を綴っていきます。コメント大歓迎です!できれば毎日一記事を目標にしたい!どうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m

 

  最初の一題は、私の受けた国試でもっとも印象に残ったこの問題。

 【 112C4 】

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 【答え】c

 受験後に知ったことですが、このカリウムの問題、実は「研修医の常識、医学生の非常識」という典型的な話題だったそうです。

 カリウムの 20-40-60-100 法則(または 20-40-60-120法則 )」と呼ばれているカリウム関連の数字があります。低カリウム血症に対して、カリウムを補充するための輸液をどのように行うか考える時に、投与しすぎるなと忠告してくれる法則です。

 

20:カリウムを補充する輸液の最大速度(許容される最も速い値)、20 mEq/h

40:カリウムを補充する輸液の最大濃度(許容される最も濃い値)、40 mEq/L

60:カリウムの一日あたりの尿中排泄量(これくらい排泄してほしいという値)、60 mEq/日

100:カリウムの一日あたりの最大投与量(許容される最も大きい値)、100 mEq/日 

 

 上記のように整理されていますが、以下の細かい補足がつきます。ちょっとややこしい・・・

 

※ 最初の20について、日本のK製剤の添付文書で輸液速度20 mEq/hまでとなっていることを示しています。しかし、末梢静脈からは輸液速度10 mEq/hまでとすべきと言われることも多く、実際にはいきなり20 mEq/hから始めるのはNGです。ちなみに中心静脈からは輸液速度20〜40 mEq/hで投与されます。

※ 次の40について、末梢静脈から投与する場合の血管炎・血管損傷・血管痛の予防という意味合いです。中心静脈から投与する場合には輸液濃度100 mEq/Lまで許容されます。

尿中Kの60という値は基準値であって、最大値ではありません。むしろ0.05 mEq/kg/hで尿中Kが出てほしいという希望です。体重50kg、1日24hで計算すると0.05×50×24=60 mEq/日となります。

※ 最後の100について、最大投与量120 mEq/日として法則化されることも(尿中Kの倍量で覚えやすい)ありますが、日本のK製剤の添付文書で100 mEq/日までとなっています。

 

 表で整理!

  末梢静脈 添付文書 中心静脈
速度 10 mEq/h 20 mEq/h 20〜40 mEq/h
濃度 40 mEq/L 40 mEq/L 100 mEq/L

 

   一般に 添付文書  または
尿中K 60 mEq/日    
最大投与量   100 mEq/日 120 mEq/日

 

 添付文書に登場する数字3つを合わせると、40 mEq/L以下に希釈して、速度20 mEq/hまでで、一日100 mEqまで投与する、という感じ。尿中Kの基準値60がやや異質ですね。なお低カリウム血症の原因を考えるときは尿中Kを20 mEq/日で鑑別する(詳細は省略)ので、さらにややこしい笑

 

具体的な投与方法は、たとえばこのような感じ。

末梢静脈:「KCl 20 mEq+生食 500 mL」(濃度40)を2時間で投与(速度10)

中心静脈:「KCl 10 mEq+生食 100 mL」(濃度100)を15分で投与(速度40)

 

そのほか低K血症について、雑多な内容を。

  • Kの値によって対応が分かれていて、2.0未満なら中心静脈から、2.0〜2.5なら末梢静脈から、2.5〜3.5なら経口で補正する
  • 低Mg血症があるとK排泄が促進されてしまうため、Mg欠乏があれば補う
  • 心電図モニタリング重要
  • 原因には①摂取不足、②腎臓でK排出促進、③腎外でK排出促進(嘔吐・下痢)、④細胞内シフト があり、細胞内シフトのとき原因の治療に伴って急激に高K血症となることがある

 


 

 以上、長々と「カリウムの20-40-60-100法則」を書いてしまいました。

 

 問題の解説を簡単に。

 112C4では、輸液製剤1L中にK 20 mEq含まれていて、末梢から投与できるカリウム濃度は40 mEq/Lまでだから、この輸液製剤1LにK 20 mEqを追加できるよね、という話。

 国試の問題はしっかりできていて、冒頭に「末梢静脈路から」と中心静脈ではないよと明記されています。

 また、「維持輸液」と書かれていて、3号液の組成になっています。1〜4号液では、2号液と3号液にカリウムが含まれるのでした。

 

 112C4は、やはり「研修医の常識、医学生の非常識」に着眼した点で良問だと思います。まぁ、もちろん問いている時はなんだコレと思いましたが笑 作問された先生あっぱれですね。これで医学生の知識の地平線はまた広がってしまいました。

 

 そして、この112C4という問題、実は同じC問題に112C36という一見似た問題があり、ここから推測して40を選んだ学生も多かったです。QBの最新刊は見ていませんが、解説にこの類似性に関する記載が書いてあると期待したいところ。

 

  【 112C36 】

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  【答え】b

 ずるいことにこの問題のKの値は、全部 20 mEq/Lとなっています。「平均的な経口摂取量の半分程度を入れたい」と言っておきながら、カリウムについては問題にしていないわけです。ナトリウムの成人推奨量は男性で8g/日ですから、mEq換算用(NaCl 1 g=17 mEq)に17かけて、8×17=136 mEq/日。これを実現できる選択肢はbしかありません。まさかの2号液が答えになっている点で、この問題も興味深いのですが、それはまた今度。

 さてK 20mEq/Lを1500 mL/日で投与すると、Kは30 mEq/日だけ投与されることになります。これが「平均的な経口摂取量の半分程度」に相当するなら、「平均的な経口摂取量」はK 60 mEq/日となります。

 あれ、60ってどこかで見たような・・・!?

 そうです。1日あたりのカリウムの尿中排泄量ですね。つまり、カリウムは正常なら、経口摂取量=尿中排泄量となります。電解質をまとめて以下のように覚えます。

Na, K, Clは経口摂取量=尿中排泄量(腸管での吸収率100%)

Ca, Mg. Pは経口摂取量≠尿中排泄量(腸管での吸収率Ca 20%, Mg 40%, P 60%)

 

 さて話を112C4と112C36の関連に戻します。けっこうな数の医学生は、60−20=40という計算をしてしまいました。60は112C36から導き出された「平均的な経口摂取量」、20は112C4の維持輸液1L中に含まれるカリウムの量です。

 112C4が問うた「カリウムの最大量(mEq)」とは、血管炎のリスク等を考慮した最大濃度(mEq/L)でした。しかし、これを最大投与量(mEq/日)と誤解すれば、112C36から導き出される60 mEq/日という値を参考にしてしまいます。もちろん、112回を受験した医学生の多くにとって、カリウムの最大投与量100mEq/日なんていう知識はありません。

 

 まとめになりますが、112C4と112C36の2問から、やはり113回以降の国試を受験する医学生にとってカリウムの20-40-60-100法則」医学生の新たな常識となっていくんだろうなと思います。医学生の知識の地平線を、実臨床に必要な範囲で広げた112C4は良問だったなと思いながら、執筆させていただきました。駄文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 <参考文献>

  • UCSFに学ぶできる内科医への近道
  • 総合内科病棟マニュアル
  • メルクマニュアル「低K血症」